一寸の『GON!』にも五分の魂【新保信長】新連載「体験的雑誌クロニクル」9冊目
新保信長「体験的雑誌クロニクル」9冊目
そこで立ち上げたのが『GON!』だった。低ーいラインのどうでもいいくだらない、まさに“雑”誌。しかし、『GON!』は、低俗ではあるが卑劣ではなかった。決してほめられたものではないにせよ、フェイクどころかヘイト記事を垂れ流す『WiLL』や『Hanada』より百万倍マシ。自分が一時期関わったというひいき目を抜きにしても、そう思う。
同じインタビューで比嘉氏は「よく過激とかなんとかいわれるけど、明からさまな個人攻撃なんてしたことないし、酒鬼薔薇事件のときでも、もしウチがあの少年の顔写真を載せるか載せないかってなったら、恐らく載せないと思う。載せたほうが面白いとは思うけど、それで『フォーカス』みたいに売れなくなっちゃったら意味ないでしょ。だからそういう意味じゃ、俺の中ではすごく一般常識に則った本だと思ってる」とも述べている。
上記インタビューから4年後の2001年に『フォーカス』は休刊。『GON!』も2001年頃からエロ&風俗雑誌化し、最後は実話誌っぽくなって2007年に休刊した。なぜそんな路線変更をしたのかは知らないが、かつての『GON!』が得意としていたジャンクな情報が2000年代に入ってネット上にあふれるようになり、役割を終えた感はあったかもしれない。
プーチン&トランプ&イーロンによって世界が鬼畜&フェイクニュース化する今、『GON!』のような雑誌は立つ瀬がない。くだらない雑誌が娯楽として存在できる平和な世界でありますように……と祈らずにはいられない今日この頃なのだった。
文:新保信長